【3分でわかる】OCRとは?業務効率を革新する文字認識・デジタル化する技術を紹介
公開日:2024.11.28
OCRは、紙文書や画像内の文字を自動で認識し、デジタル化する技術です。導入することにより、業務の効率化だけではなく、データの検索性や活用性が飛躍的に向上します。本記事では、OCRの基本的な仕組みや導入費用などを解説します。読み終えたあとには、現場での課題解決に役立つ情報を得られるでしょう。
目次
OCRとは?
OCRは「Optical Character Recognition」の略であり、紙文書の文字をデジタルデータに変換する技術です。スキャナーやカメラで手書きや印刷された文字を読み取り、コンピューターが処理できる形式に変換します。
近年、導入企業が増加している背景には、手作業による入力作業の負担軽減があります。請求書や契約書などの紙文書をスキャンするだけで、WordやExcelなどの編集可能なデジタル文書に変換できるため、OCRの活用により、企業の文書管理作業の効率化が実現できます。
OCRはどのように文字を認識するの?
OCRの文字認識は、下記の4段階で行われます。
1 | 画像取り込み | スキャナーで文書を取り込み、傾きや明るさを補正する |
2 | 前処理 | 文字が書かれている部分を特定し、文字ごとに分割する |
3 | 文字認識 | AIが文字の特徴である線の形状や配置を分析し、データベースと照合して判別する |
4 | 後処理 | 文脈を考慮した確認を行い、編集可能なデジタルテキストとして出力する |
第一段階では、スキャナーで文書を取り込み、画像の傾きや明るさを補正します。第二段階では、文字が書かれている部分を特定し、文字ごとに分割する。
第三段階で、AIが文字の特徴である線の形状や配置を分析、データベースと照合して文字を特定し、最終段階では、文脈を考慮した確認を行い、編集可能なデジタルテキストとして出力します。
文字認識の精度は年々向上しており、現在では99%以上の高精度な認識が可能です。特に機械学習技術の発展により、従来は困難であった手書き文字の認識精度も大幅に改善しました。
OCRはどんなものを認識できるの?
OCRはさまざまな形式の文字データを認識します。認識可能な書類や条件は下記のとおりです。
認識可能 | 印刷物 | 請求書、領収書、契約書、新聞、雑誌、書籍など |
手書き | フォーム、申込書、メモなど | |
対応フォントや形式 | くずし字、特殊フォント、多言語文字 | |
特殊文書の対応 | 表やグラフが混在する文書もレイアウト解析技術で認識可能 | |
認識可能な文字サイズ | 高解像度(300dpi以上) | 細部が明確に認識されやすい |
低解像度(150dpi以下) | 認識精度が低下する可能性がある |
印刷物では請求書や領収書、契約書などのビジネス文書から、新聞や雑誌、書籍まで対応可能です。手書き文字では、フォームや申込書、メモなどを認識します。後述しますが、最新のAI技術を活用したOCRシステムは、くずし字や特殊なフォント、多言語の文字も認識可能です。
また、OCR技術では、入力される画像データの解像度が文字認識精度に影響を与えるため、文字サイズも解像度に左右されます。さらに、表やグラフが混在する文書でも、レイアウト解析技術により適切に認識できます。
OCRはどのように文字をデジタル化するの?
OCRは複数の技術を組み合わせて文字をデジタル化します。文字をデジタル化する流れは下記のとおりです。
順番 | 項目 | 詳細 |
1 | 画像の取り込み | スキャナーやカメラを使用して画像を取り込む |
2 | 文字領域の特定 | 機械学習アルゴリズムを活用し、画像内で文字が書かれている部分を特定する |
3 | 文字の分割 | 特定した文字領域を1文字ずつに分割する |
4 | 特徴の抽出 | 各文字の特徴(線の太さ、曲がり具合、接続点など)を分析・抽出する |
5 | 文字の変換 | 抽出した特徴をデータベースに登録された文字パターンと照合し、対応する文字に変換する |
6 | 文脈の確認 | 前後の文脈を考慮して確認し、正確なテキストデータを生成する |
7 | データの出力 | 編集可能な形式やPDF、テキストファイルなど、用途に応じた形式で出力する |
OCRでは、スキャナーやカメラで取り込んだ画像から、機械学習アルゴリズムで文字が書かれている部分を特定します。文字部分を1文字ずつに分割し、線の太さや曲がり具合、接続点など抽出した特徴を、データベースに登録された文字パターンと照合し、文字に変換します。最後に、前後の文脈を確認する処理を行い、正確なテキストデータを出力する流れです。
デジタル化された文字は、Microsoft Officeなどのソフトウェアでそのまま編集可能です。また、PDFやテキストファイルなど、さまざまな形式での出力に対応しており、用途に応じて最適な形式を選択可能です。
さらに進化したAI-OCRとは?
AI-OCRは、人工知能を活用した最新の文字認識技術です。従来のOCRにディープラーニングを組み合わせることで、手書き文字や非定型書類の認識精度が大幅に向上しました。
AI-OCRを導入する利点は、使用するほど文字認識の精度が向上する点にあります。実際の業務では、請求書や見積書などさまざまな形式の帳票を、事前設定なしで自動的に読み取ることができます。
また、クラウドサービスや業務システムとの連携も容易で、文字認識からデータ活用までをシームレスに行える点もメリットといえるでしょう。AI-OCRの導入により、データ入力作業の効率化と人的ミスの低減が実現できます。
OCRとAI-OCRの違いは?
従来のOCRとAI-OCRの最大の違いは、文字認識の柔軟性と精度にあります。従来のOCRは定型フォーマットの文書には強いものの、手書き文字や歪んだ文字の認識は困難でした。一方、AI-OCRは機械学習技術により、かすれた文字や手書き文字も高精度で認識できます。
また、AI-OCRは継続的な学習により精度が向上し続けるため、長期的な業務効率の改善が期待できるでしょう。
OCRで何かできるの?
OCRではデータ入力の自動化と、文書のデジタル化による管理の効率化が実現可能です。導入企業が増加している理由には、手作業による入力作業の負担軽減や文書の電子化による検索性向上が挙げられます。
近年は「e-文書法」の制定により、企業の文書電子化が必須といえます。企業がOCRを活用することにより、業務効率向上とコンプライアンス対応の両立が可能です。
e-文書法とは | |
概要 | 企業等で紙で保管されていた特定の文書や書類を電子的に保存することを認める法律 |
正式名称 | 「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」 |
施行時期 | 2005年4月 |
対象文書 | 帳票類、財務諸表、議事録などの保存義務がある文書
一定の要件を満たせば、スキャンした画像データも原本として認められる |
主な効果 | 保存コストの削減、業務効率化、企業間電子商取引の促進など |
制約 | 一部対象外の文書が存在し、紙文書の保存が全く不要になるわけではない |
管轄 | 経済産業省、国税庁など文書の種類に応じて各省庁が監督 |
参考:「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」
下記では、COMITXのサービスを交えながらOCRの強みを紹介します。
伝票や帳票のデータ入力
OCRは伝票や帳票のデータ入力に強みを持ちます。伝票や帳票は定型フォーマットで作成されていることが多く、OCRはこれらの固定的なレイアウトに適応しやすいのが特徴です。最新のOCRではAI技術が活用され、フォーマットが多少異なる場合でも認識精度を高く保つことが可能です。
また、伝票や帳票には「取引先名」「日付」「金額」など特定のフィールドが明示されており、OCRはフィールドに基づいて情報を正確に抽出できます。手書き文字や複数の言語で書かれた伝票・帳票にも対応できるOCRソフトウェアが増えており、入力業務の幅広いニーズに対応可能です。
OCRにより伝票や帳票のデータ入力が自動化されることで、下記の効果が実現します。
- 業務効率化
- 人的ミスの削減
- コスト削減
- リアルタイムデータ活用
- 法令遵守と文書管理の改善
COMITXのAI-OCRでは、より伝票や帳票のデータ入力の効率化が可能です。独自開発のレイアウト構造認識技術により、複雑なテーブル構造や歪みのある文書でも高精度な解析を実現しています。
特に、医療や保険の分野に強みを持ち、診断書の専門用語や略語を文脈に基づいて適切に認識するなど、高度な補正機能を備えます。
また、少量のトレーニングデータでも効率的な学習が可能で、業務に応じたカスタマイズも容易です。基本回帰器とスタッキング回帰器を組み合わせた二段階アプローチにより、高い認識精度を維持し、キーポイントセグメンテーションネットワークを用いたテーブル構造の詳細解析により、文書の傾斜や歪みにも対応します。
文書のデジタル化
紙文書をデジタル化するメリットには、物理的なスペースの削減と情報検索の効率化が挙げられます。文書データを圧縮することにより、段ボール箱数箱分の財務データもわずか数メガバイトに収まります。
また、デジタル化された文書はキーワード検索が可能となり、必要な情報への素早いアクセスが実現可能です。
さらに、紙面上の表組データもデジタル化することにより表計算ソフトでのグラフ化など、データの再利用も容易になります。文書管理の対象は、書籍や論文、契約書など多岐に渡り、新聞のように形式が統一されていない文書も含まれます。
OCRの費用感は?
OCRを導入する場合の費用は、サービスの種類や利用規模によって大きく異なります。
項目 | 内容 |
初期費用 | 無料~20万円程度 |
月額費用 | 3万円~20万円程度 |
費用に含まれる内容 | ソフトウェアのライセンス料
システム構築費用 運用管理費用など |
従量課金 | 1枚あたり1~8円程度 |
費用例 | 月間1,000枚の読み取りの場合
基本料5万円+従量料金1万円=合計6万円程度 |
OCR導入における初期費用は無料から20万円程度、月額費用は3万円から20万円程度が一般的な価格帯です。費用の内訳はソフトウェアのライセンス料やシステム構築費用、運用管理費用などです。料金体系では、基本料金に加えて1枚あたり1~8円程度の従量課金が設定されています。
たとえば、月間1,000枚の読み取りを想定する場合、基本料5万円に加えて従量料金1万円程度となります。OCR導入時は、読み取り予定枚数を正確に把握し、最適なプランを選択することで、コストを適正に抑えることができるでしょう。
OCRのデメリットは?
一方、OCRには文字認識精度の限界という重要な課題があります。手書き文字の認識率は、最新のAI-OCRを使用した場合でも97~98%程度が限界とされており、完全な自動化は困難です。
特に金額や日付などの重要情報は、AI-OCRにより自動化・自律化が進んだとしても、一部の判断や制御に人間を介在せざるを得ません。
また、処理速度の問題も無視できません。大量の文書を一括処理する場合、1枚あたり数十秒の処理時間が必要です。100枚以上のデータを処理する場合では更に時間が増加します。
セキュリティ面では、クラウド型システムでの情報漏洩リスクに注意が必要であり、OCR導入時は、運用体制の整備とセキュリティ対策の実施が求められるでしょう。
まとめ
OCR技術は、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる重要なツールです。特にAI技術を活用した最新のOCRは、手書き文字や非定型文書にも対応し、データ入力作業の効率を大幅に向上させます。
導入時は費用対効果や運用体制の整備が重要となりますが、長期的な視点では業務効率化による大きな効果が期待できます。文書のデジタル化は今後も加速する傾向にあり、OCRは企業の競争力を高めるための基盤技術として、ますます重要性を増していくでしょう。
COMITXのAI-OCRは、多様な非定型帳票を正確に読み取り、内容や条件を瞬時に理解・判断する機能を備えています。整理されたデータを定められたフォーマットに転記することで、大幅な工数削減が可能です。
また、従量課金制の導入や無償POCの提供など、企業のニーズに合わせた柔軟な対応をいたします。に対応いたします。
COMITXでは、国内大手損害保険会社に提供を開始している火災保険の家屋損害に加えて、自動車保険や、少額短期保険、さらには生命保険の分野にも展開しています。非定型帳票の使用が課題となる業界において、AIの力で保険金算定や請求業務の効率化が実現可能です。迅速な支払いを実現することで、企業の業務負担軽減を促進します。
さらに、各保険分野に特化した機能を提供することで、より細かな業務プロセスに対応し、保険業界全体における業務効率化を推進します。
近い将来は、商社における契約書や輸出入関連書類の自動化や、クレジットカード会社での審査業務の迅速化・不正利用の早期発見、リース会社での契約書の自動判別・スケジュール管理、さらには建設業界での工事進捗管理や見積書処理の最適化など、幅広い業種や業務に応用シーンを拡大してまいります。